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【コン検通信 理事だより】コンタクトセンターのデジタル化と有人対応のバランス

AIやチャットボットの導入が進む中で、コンタクトセンターの運営も大きな変化を迎えています。単純な問合わせへの対応の多くを自動化したことで、従来のようにすべての対応をオペレーターが行う必要はなくなりました。しかし、「すべてをデジタル化すれば効率的」というわけではなく、人による対応が不可欠な場面も多く存在します。
デジタルと人の対応をどのように組み合わせるべきか。コンタクトセンターの運営に求められる視点について考えていきます。

デジタル対応が求められる背景
デジタル技術の導入が進む背景には、いくつかの要因があります。
まず、顧客の行動変化が挙げられます。スマートフォンの普及により、電話よりもチャットやFAQを利用する人が増えています。特に若年層では、音声通話を避け、自己解決できる手段を好む傾向が強まっています。
次に、コンタクトセンターの人材不足が深刻化していることも大きな要因です。オペレーターの採用や育成が難しくなる中、限られた人員で効率的に業務を回す必要があります。そのため、チャットボットやビジュアルIVRといったデジタルツールが活用されるようになりました。
また、企業にとってコスト削減も重要なポイントです。AIを活用した対応は、24時間365日稼働が可能であり、運営コストの削減につながります。

デジタルだけでは解決できない課題
デジタル化には多くの利点がありますが、すべてをAIやチャットボットに任せることはできません。自動化された対応では、顧客の感情を汲み取ることが難しく、特にクレームや複雑な相談には不向きです。

例えば、次のようなケースでは、オペレーターの対応が求められます。
 ・クレーム対応やトラブル処理
 ・複数の手続きが必要な問合わせ
 ・特殊な事情が絡む相談
 ・デジタルツールに不慣れな顧客の対応
デジタル化を進める一方で、人の対応が不可欠な場面を見極め、適切に役割を分けることが重要です。

デジタルと人の最適なバランスとは?
デジタルと人の対応をバランスよく組み合わせるためには、次のような工夫が必要です。

1. まずはデジタルで一次対応を行う
チャットボットやFAQを活用し、基本的な問合わせには自動対応する仕組みを整えます。例えば、営業時間の確認や手続きの流れなど、シンプルな内容はデジタルで完結できるようにします。

2. 必要に応じてオペレーターにスムーズに引き継ぐ
チャットボットが対応しきれない場合、スムーズにオペレーターへエスカレーションする仕組みが重要です。問合わせの途中で顧客がストレスを感じないよう、デジタルと有人対応の切替えをスムーズに行う工夫が求められます。

3. オペレーターには高度な対応を任せる
AIが単純な業務を処理することで、オペレーターはより高度な対応に集中できます。例えば、トラブル対応や提案型のカスタマーサポートなど、顧客の満足度を左右する重要な業務に専念できる環境を整えます。

4. デジタル対応の精度を継続的に改善する
デジタルと人のバランスを最適化するには、AIやチャットボットの運用データを分析し、継続的に改善を行うことも不可欠です。顧客の利用状況を確認し、不満が多いポイントを見直すことで、デジタルの解決率を向上させることができます。

効果的に組合せるために意識すべきポイント
デジタルと人の対応を効果的に組合せるために、意識すべきポイントは次の3つです。

1. 「顧客目線」で対応チャネルを設計する
デジタル対応を導入する際は、顧客が「使いやすい」と感じる設計を意識することが大切です。

2. オペレーターの役割を明確にする
デジタル化が進む中で、オペレーターの業務内容も変化します。新たに求められるスキルを整理し、育成の方向性を明確にすることが重要です。

3. 現場の意見を活かしてデジタルの改善を進める
チャットボットやFAQの運用データを定期的に確認し、現場のフィードバックを反映させながら、継続的に改善していくことが必要です。

AIやチャットボットの活用が進む中で、コンタクトセンターの運営も変化しています。しかし、すべてをデジタルに置換えるのではなく、「どこに人の対応が必要か」を見極めながら、適切なバランスを取ることが重要になるでしょう。

 

<タイムズコミュニケーション株式会社 大友 和明>