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[コン検通信 理事だより]AIを利用したシミュレーションで研修の効率化を実現する

現在、コンタクトセンターでAIを活用する取り組みは、多くセンターで行われていると思います。コンタクトセンターでのAIの活用では、大規模言語モデル(LLM)や自然言語処理(NLP)を活用して、オペレーターの回答支援や、顧客との会話を要約し、コールログを自動作成するなどが多いと思います。

一方で、海外では、オペレーターの教育ツールとしてAIが活用されています。
日本でも、AIを活用したロールプレーイングシステムが開発されていますが、現在のところでは、活用されている企業は少ないのではないでしょうか。

オペレーターの教育で最も人手が必要なのは、ロールプレーイングによりお客様との会話シミュレーションにより、学習した内容を理解しているか検証する場面だと思います。ロールプレーイングは、1対1で実施しなければならないため、研修するオペレーター数が多いと、研修トレーナーだけでは時間がかかってしまうため、現場からスーパーバイザーの協力を得ながら実施しているセンターも多いのではないでしょうか。

海外のセンターでは、AIを活用したロールプレーイングが既に活用されていて、知識、スキルの検証をAIが行っています(海外ではスキル監査とも呼ばれています)。海外での活用事例を紹介すると、AIでのシミュレーション(ロールプレーイング)では、目標とするKPIを設定します。一般的なKPIの例としては、初回解決率、通話品質スコア、コンプラアインススコア、CSATスコアなどがあります。

次にオペレーターが実施するシミュレーションの内容を検討します。
シミュレーションの内容は、コールリーズン分析からセンターに問合せの多い項目の上位5項目を選択し、選択された5項目についての顧客対応のシナリオを作成します。または、オペレーターのパフォーマンス評価から、改善が必要なスキル洗い出し、改善が必要なスキルにあわせたシナリオを作成します。この場合には、KPIの設定も改善が必要なスキルを設定します。

シナリオが作成できたら、AIに設定をします。オペレーターは、研修受講後に、AIによるシミュレーションを実施します。シミュレーションが終了するとAIがシミュレーションの結果を評価し、評価結果が提示されます。評価結果より、知識やスキルが不足していると判断された項目について、オペレーターは再学習をします。

オペレーターの再学習は、マイクロラーニングで行われます。マイクロラーニングとは、eラーニングやビデオ学習などを利用し、短時間(10分以内)で学習する方式を言います。オペレーターは、不足しているスキルについて、マイクロラーニングで再学習し、再度AIシミュレーションを実施します。

この事例のように、AIを研修に活用することができれば、研修が効率化されるだけでなく、オペレーターはいつでも自身の都合で学習、検証をすることができるようになります。
また、この学習スタイルになると、研修トレーナーは、シミュレーションのシナリオの作成や、AIシミュレーションの評価結果をもとに、オペレーターにコーチングを実施するなど、研修トレーナーに必要なスキルも変化します。

コンタクトセンターは、働き方の多様化が進み、在宅勤務者やシフトによる出勤など、一度に集合した研修を実施することが難しい環境になってきています。
そのため、研修方式も対面研修から、eラーニングやビデオ学習、オンライン研修などに変化しています。研修後に知識、スキルが取得できているかAIによるシミュレーションを利用し検証できるようになれば、研修は、オペレーターが時間のあるときにいつでも、どこからでも学習することができ、知識、スキルの習得状況をいつでもどこからでもAIで検証できるようになるため、研修スタイルも大きく変化することになるのではないでしょうか。

<グッドエンゲージメント 代表 田口 浩>