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[コン検通信 理事だより]顧客体験(CX)における世界のセンター事情

みなさんこんにちは。今年の4月に理事に就任しました、プロシードの菊池と申します。新入社員のときにコールセンターに配属されてから今日に至るまで、立場は違えど、この業界に継続して関わってきました。コンタクトセンターに勤務している、あるいはこれから勤務する方が、コン検をうまく活用し活躍できるようにしたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

■センター方針と顧客体験(CX)

皆さんの組織には、センター方針(センターが目指す方向性)がありますか。コン検の中にも、エントリー資格を除くすべてに「コンタクトセンター戦略・監査」として、センターの利害関係者からの期待や、組織方針について含まれています。私は多種多様なセンターにお伺いする機会がありますが、5-6年程前から、「顧客体験(CX)の向上」という言葉を目にする機会が増えました。しかし、「方針」に掲げられていても、実態が伴わない、あるいは顧客体験とかけ離れた活動を行っているケースも少なくありません。

■顧客体験を向上させる3つのポイント

顧客体験を端的に言うと、「顧客が企業と関わるすべての過程における体験」です。この体験は、サービスや製品利用の開始、利用中、更新や再購入、解約など、様々なシーンで発生します。この体験を向上させるためには、一般的に以下を実現する必要があります。

1.エフォートレス
「努力」や「負担」が、より少ないことです。すなわち、何かを行う際に、物理的な行動や精神的なストレスを最小限に抑えることです。例えば、お客さまが何かの製品を使っているときに、問い合わせが必要になった時点で、エフォート(努力、負担)が発生します。究極のエフォートレスは、それら問合せ等を“発生させない”ことです。

2.フリクションレス
「障害」や「摩擦」が、より少ないことです。何らかの操作等を行う際、スムーズに目的を達成できるようにします。フリクションレスな状態では、不必要な手続きや待ち時間、入力の煩雑さなどがなく、迅速かつ効率的に自己目的を完了することができます。

3.寄り添い
「不安」や「不満」などの気持ちに寄り添うことです。顧客は、自分にとって不利益な状況になることを避けたいものです。そのようなときに、納得がゆくまで説明を受け疑問点を解消することが必要になります。有人による対応が最も力を発揮すると言えるでしょう。

これらの中で、何が最も有効に機能するかは、業種業態によって違いがあります。顧客の特性を理解しなければ、誤った顧客体験施策に進んでしまうことは目に見えるでしょう。

■会社視点の顧客体験

残念ながら、自社における顧客特性の理解や、顧客アンケート等によるVOC収集・管理が不十分なまま、「こうすれば顧客体験は良くなる(だろう)」という思い込みで活動することがあります。この活動によって良い効果が出る場合もあるでしょう。しかし、顧客体験を悪化させることも少なくありません。

特に、ここ数年のDX(デジタルトランスフォーメーション)の流行は、先に述べた「エフォートレス」と「フリクションレス」を後押ししました。しかし「寄り添い」をする機会を減らす舵を切った組織も多く見かけます。いつの間にか「顧客体験(CX)」は単なるお題目となり、有人チャネルの呼減に代表されるコスト削減を実現したいがための活動になっているのです。

■世界のセンター方針事情

これらの状況は、日本だけなのでしょうか。
昨年、世界中のセンター関係者1,000名以上、一般消費者約5,600名を対象に実施した調査「Global Benchmarking Series 2023」の中から、いくつかご紹介しましょう。

1)あなたの組織には、方針がありますか。
  はい…88% いいえ…7% わからない…5%
2)あなたの組織の方針には、なんのテーマが含まれていますか。
  顧客体験…89% 品質…69% 従業員体験…47% サービスのスピード…43%
  有益性…32% 売上高…29% コスト…29% 株主還元…12% その他…29%
3)あなたの組織にはCCO(Chief Customer Officer:最高顧客責任者)がいますか。
  はい…37% いいえ…55% わからない…8%

方針の設定、顧客体験をテーマにする組織が多いことは、日本と違いはない結果となりました。しかし、ご紹介した中での最後の設問、CCO(Chief Customer Officer)に関して言えば、日本国内においてそこまで多くないでしょう。CCOは経営層と密接に連携する存在です。主な役割は、顧客戦略の策定や設計、顧客データの分析と管理、従業員への顧客体験に関する教育等です。本当に組織が顧客体験(CX)向上を実現すべく本腰を入れて取り組むのであれば、このポジションを設定すべき、と言えるでしょう。

■顧客体験とコンタクトセンター

コンタクトセンターは、今後も顧客体験を向上するための重要な組織であり続けると考えます。企業がその重要性を理解し、より良いサービスが溢れる社会になるよう、微力ながら尽力いたします。

株式会社プロシード コンサルティング部・部長 菊池正倫

参考)「COPC Global Benchmarking Series 2023 第一弾 顧客体験の理解と戦略」
https://proseed.co.jp/news/global_benchmarking_series2023_launch1113/