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[コン検通信 理事だより]国際規格から見る2023年のCXのトレンド

様々な企業の方々との会話から、顧客体験(CX:Customer Experience)のキーワードは、ここ数年でかなり浸透してきたように感じます。「CXってなんだ?」「CSとの違いはなんだ?」というフェーズが終わり、「わたしたちの企業ではCXをこう考える」と定め、その実現に向けたステップへ進みだしている企業が多いように感じます。

そのような中、「この活動を続けていくことは本当にCXの向上につながるのか」、また、「CXの向上が企業価値やビジネスパフォーマンスの向上につながっているのか」などといったお悩みの相談をいただくことが多くなってきました。今回のコラムでは、最新の国際規格(=CX活動のトレンドの参考)から、新たなチャレンジについて紹介したいと思います。

国際カスタマーエクスペリエンス協会(ICXI:https://icxi.com/)とは
英国に本部があるICXI(International Customer Experience Associate)は、優れたCXを実現する組織に共通する事項を研究し、多くの企業で活用できるような規格(ICXS)を作り、提供しています。
以下は、サービスの卓越性に影響を与える主要な要素をまとめたサービスエクセレンスモデルです。方針策定にはじまり、提供場所(チャネル)、製品・サービス、ジャーニーとプロセス、人材で構成されています。

アトラクター: 顧客を惹きつける要素
リテイナー: 惹きつけた顧客をつなぎとめる要素

このモデルには優れたCXを持続的に提供できる組織になるために必要なことが、多岐に渡って記載されています。今回は、私が特に印象的だった2つのポイントを紹介したいと思います。いずれも、「言うは易く行うは難し」の内容です。

Point1:会社(経営)としてカスタマーサービスに携わる従業員が大切であると宣言する
ICXSの中では、オペレーターやSVを「コスト」ではなく、優れたCXを産み出す重要なポジションとしています。例えば、対外的(Webサイト等)に「私たちのコールセンターのスタッフは日々サービス向上のために、学習しています。お客様の不便を助けるために努力しています。お客様は、当社のスタッフに対して敬意をもって接してください。」といった意図を含むカスタマーサービスに関するメッセージを掲載するなどです。そして、宣言だけではなく、従業員のHappiness、育成への投資、働きがいやワークエンゲージメントとしてのWell-beingなど、実際の取り組みも規格では重視されています。つまり、経営層が「カスタマーサービスはコストではなく、企業の持続的成長・顧客・社会にとって重要である」と本気で思えるかどうかが重要なポイントの一つ目です。

Point2:顧客視点でデジタルとヒューマンを包含したジャーニー分析を必須にする
デジタルチャネルの急速な拡大によって、顧客視点での「動線(体験)」はより複雑なものとなってきています。よって、ICXSではチャネルを横断した顧客体験の定期的な評価(デジタルとヒューマンを包含したジャーニー評価)が必須事項になっています。つまり、従来からの、Web単独で様々なデータ分析からのUI/UXの改善、またコールセンターだけで電話応対の品質に注目して改善を行うといった、チャネル毎/部門毎の独立した活動ではありません。
実際にCX品質調査を行うと、「デジタルチャネルが顧客動線に組み込まれていない」「顧客の求める言葉で書かれていない」「情報が多すぎて不安になるので電話で確認したくなる」などといった課題が多く発見されます。しかし、これらを改善するためには組織の責任範囲と改善できる範囲が結びついており、デジタルとヒューマンを包括的に分析し改善することは容易ではなく、片手間でできる活動ではありません。つまり、「組織軸ではなく、顧客視点での体験全体を評価・改善する機能・体制を正式に設けられるか」が二つ目の重要なポイントになります。

CX改善の目的や狙いは企業によって様々かと思います。目的と手段について改めて確認するフェーズにきているかもしれません。
以上、CX向上を目指すうえで重要な2つのポイントをご紹介させていただきました。

<株式会社プロシード 根本 直樹>