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この原稿を書いている数日は、コロナの新規感染者数は東京で一桁の日もあるほどで、急激に減っている状況です。しかしながら、世界各地でオミクロン株による感染の拡大もみられ、まだまだ先の読めない日々が続きそうです。コロナ禍に置かれて2年が経とうとしています。街の賑わいをテレビで見るにつけ、そろそろ開放してほしいと痛感する今日この頃です。
今回はそんなコロナ禍にあって、私が自社で担当している人材育成のあり方がどのように変化したか、ご紹介したいと思います。
当社は2005年にCSL Collegeを立ち上げ、人材育成に力を入れてきました。2019年に、従来の「コンタクトセンター人材の育成」という考え方から、VUCAの時代、不確実性が高く将来の予測が困難な状況においても、自ら動くことができ、クライアントと共創できる人材を育成するという目的にシフトし、CSL Universityとして、人材育成の仕組みを大きく変えることとなりました。ちょうど時を同じくして、親会社である富士通がDX企業への転換を宣言し、従来の職能から職務、つまりジョブ型人事制度にかじを切りました。これにより、自分のキャリアは自分でつかむ、そのために、1on1で上司と相談をしながら、「自ら学ぶ」という方針が徹底されました。
こういった大きな変化が始まったとたんにやってきたのが「コロナ」です。
新たな取り組みや新たな目標を目指す中、集合研修を止めざるをえない状況となりました。とはいえ、人材育成そのものを止めるわけにはいきません。そこで、「仕方なく」オンライン研修を立ち上げ、推進することにしました。
当部にはベテランのスタッフも多く、オンラインで実施することによる研修効果の低下を危惧する声も上がりましたし、最初はかなり及び腰でした。ところが始めてみると受講者からは大変意外な反応があがりました。
「リアルよりもディスカッションで緊張しない」「正面から顔をあわせられるので、今までよりも顔と名前が一致して、一体感がある」「セルフワークの時は集合しているときよりも集中できる」などなど。中には集合よりもリモートの方がよいという声も聞かれたほどです。
また、当社は全国で13箇所に拠点があり、平等な育成機会の提供という点で課題がありました。拠点で対応が難しい研修に関しては人材開発担当者が出張して対応したり、階層研修に関しては、地方拠点から受講者が出張して本社に集合するなど、工数と経費がかなり掛かっていました。以前からTV会議システムを活用した研修を行うことはありましたが、双方向性を担保するのが困難で、緊急避難的な対応にとどまっていました。今回オンライン研修で全国の社員が平等な条件下で研修に参加できることになり、従来出張にかかっていた工数や経費は大幅に削減ができました。それ以上に有効だったのは、受講生が、他拠点の社員との意見交換で得られる気づきや刺激であり、企業としての一体感を感じられる機会となった点です。
このように最初は「仕方なく」始めたオンライン研修でしたが、今では大きな人材育成手法の柱となっており、今後はコロナが終息しても、新たな人材育成のあり方として、集合研修と併用して活用を続けていく予定です。
オンライン研修と同時に力を入れたのが「動画研修」です。正社員登用研修、新任●●研修、というような研修は、毎年同じような内容になりがちで、新たに正社員として、リーダーとして、管理職として、知らなければいけない会社のルール的な内容になる傾向がありました。ただ、今までは「新任研修は大切」という意識が強く、課題はありながらも、継続していました。
今回は課題を解消するよい機会ととらえ、すべてを動画研修に移行しました。その代わり、登用されて半年程度経ってから、フォロー研修と称し、それぞれのレイヤーでどうあって欲しいかというマインド/マネジメント研修をオンラインで実施することにしました。
これらの事例のように、従来であればこれまでの慣習にとらわれ変えにくい点を、変えることができたのはコロナ禍による収穫であったと考えています。育成のあり方を一つ変えると、その他の活動も今まで以上に変革することが前向きに捉えられるようになりました。
皆さんも、改めてゼロベースで今の業務を見直し、今だから変えられる何かがないか、考えてみる機会にされてはいかがでしょうか。
<富士通コミュニケーションサービス株式会社 津江 好美>