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[コン検通信 理事だより]働く人たちのためのDX

DXブームです。
DX
の二文字が目に入ってこない日はないほどです。DXというと以前は、Deluxeの略を意味していました。ただしこの略語は日本以外では使われない「日本語英語」の一つです。今、流行りのDXは言わずもがなですが、Digital Transformation の略で、こちらのDXは英語のメディアでも使われています。

Digital Transformationの定義は、ウィキペディアには以下のようにあります。
Digital Transformation is the adoption of digital technology to transform services or businesses, through replacing non-digital or manual processes with digital processes or replacing older digital technology with newer digital technology.
(私訳:「デジタル・トランスフォーメーションは、デジタル技術を活用してサービスやビジネスを変革していくこと。デジタルではなかったり人手がかかるプロセスをデジタルなプロセスに置き換えたり、旧来のデジタル技術を最新のデジタル技術に置き換えることによる」)

日本ではDigital Transformation という言葉が流行り言葉のように使われていますが、英語のメディアでの使用頻度は日本ほどではないように思います。欧米においては、Digital Transformation なるものの実践はずっと進んでいて、流行り言葉としての新鮮さが失われているということかもしれません。

この数十年、日本では「失われた20年」というような言い方がされてきました。「なぜ失われたのか」ということですが、大きな理由として、日本社会や企業のリーダーたちが、競争国、競合企業が積極的に進めていったDXに躊躇してきたことがあげられるでしょう。

流行り言葉としてなんとなくわかったつもりのDXには不安を感じます。DXを推進する主目的としては、生産性や効率、そして利益率を上げることがあります。同時にDXは働く人たちのためにもあるべきだという視点を忘れてはならないように思います。
「人手がかかるプロセス」をなくしていくためのDXはもちろん大切なのですが、それだけでは「人とデジタルの共存(共生)」の視点はどこかに忘れられたままです。

働きやすい環境や職場を作っていくためのDXという視点は、これからますます大切になってくるのではないかと思うのです。真の意味で、人を大切にするビジネスのやり方を追求していくことは、SDGsの観点からも重要ではないか?
昨年からのコロナ禍のもと、それまで非常に困難であると考えられていたコンタクトセンター業務の在宅化をいち早く進めていった外資系保険会社の取り組みがマスコミ等で大きく取り上げられました。
これなどは、まさに「働く人たちのためのDX」であると言えます。

わたくしは仕事で学校関係者とお会いする機会が多くあるのですが、率直に申し上げて、コンタクトセンター業界は学校関係者が学生に就職先として積極的に勧めてきた業界ではありません。その理由は、非常にストレスが高く、働く人たちを使い捨てている会社が多いという印象がある(あった)からです。それらの印象はかなりの部分が誤解に基づくもので、少なくとも私どもの協会に属する企業のみなさんは、従業員の心身ともの健康や職場環境にたいへんなご配慮をされていると思います。

コンタクトセンターのDX化、AIの活用などが、ここ数年盛んに議論されるようになりました。経営者たちは、急にDXを口にするようになりましたが、その際大切にしないといけないのは、DXAIが効率を高めるためだけではなく、働く人たちのためでもあるべきだということです。

就職課の教員や職員が、積極的にコンタクトセンターへの就職を進めていく時代が来ることを期待しています。コンタクトセンター業界の経営者たちの責任は大きいのではないかと思います。

<株式会社 オデッセイ コミュニケーションズ / 日本コンタクトセンター教育検定協会 代表理事 出張 勝也>