インフォメーション
新型コロナウィルスが猛威を振るい、企業活動や私達の日常生活は大きな影響を受けました。経済的な危機感や過ごしづらい日常といった負の影響は計り知れません。一方で僅かなプラス面を見ようとすれば、遅々として進まなかった日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)が一気に進んだ、という捉え方もあるようです。身の回りで実感することでいえば、「オンライン診療」「音楽ライブ配信」「在宅勤務」などが挙げられます。「使ってみたらとっても快適だった、魅力的だった。こんなニューノーマルも良いかもしれない」そういった新しい生活体験との出会いも、コロナが私達に与えた影響かもしれません。
私達が所属するコンタクトセンター業界でも、様々なニューノーマル施策が紹介されていますが、皆さんの携わるセンター運営では如何でしょうか?
・チャットボット自動応答
・オペレータの在宅勤務
・リモート環境でのモニタリング、サポート、チーム連携、トレーニング
・従業員感情分析
中でもオペレータの在宅勤務については、「システム安定稼働」「セキュリティ課題」「顧客情報の扱い」「SVによるオペレータサポート」など様々な観点で、“在宅化が難しい”とされていたものではないでしょうか?
あるアメリカの公的機関の定義ではエッセンシャルワーカー(コロナ禍でも通常の勤務形態の継続が必要とされる業種)として、国・自治体の職員、911緊急事態対応の関連職員、食品・農業・重要な製造業・情報技術・輸送・エネルギー関連の企業の業務などが含まれます。一部のコンタクトセンター業務はこの中に含まれるようです。
在宅化が難しく、対応内容によってはエッセンシャルワーカーの定義にも含まれる業態ですので、コロナ禍でもコンタクトセンターの在宅化は進まなかったのでしょうか?国内コンタクトセンターの在宅化は4月から6月で3倍に増えたという集計もあるようです(出典:CALLCENTER JAPAN 2020.10)。実際の対応状況として、私の運営するセンターから2つの事例をご紹介させて頂きます。
1.外資系企業の製品サポート業務
グローバルに製品を提供するこちらのクライアント企業は、コロナ拡大の3月中旬に全世界をカバーする10数社のコンタクトセンター運営会社とこの企業のサポート部門幹部が連携する電話会議を定例化。毎日2回、100名弱の参加者が、世界各地の感染状況やロックダウン(都市封鎖)、それによる外出禁止やオフィス立入り禁止、PC等の自宅への配送の不可など、オペレーション継続を困難にする状況の共有が行われました。日本は他の国々から約1か月遅れて、4月7日に緊急事態宣言が発令されました。私達のセンターは、この電話会議から得た情報を元に、「緊急事態宣言発令後は人と物の移動が著しく困難になる」という想定で準備を行いました。特にオペレーション継続が必須となる1つの拠点については、「オペレータ100%在宅化」を目指して準備を進めて行ったのです。数百名分の在宅オペレーション環境とトライアル訓練を十分に積んだ状態で4月7日を迎え、翌朝9時の始業時には、目標通り「100%在宅勤務」のスタートを切れたのです。
当時は、新型コロナウィルスの拡大要因を巡る米中の意見対立や、各国の国境封鎖により、「グローバルデカップリング(国際協調の崩壊)」がメディアで取り上げられていました。しかしこのグローバル企業は、国家レベルの非協調とは相反し、逆に国際協調によって、コンタクトセンターオペレーションの継続というBCP(業務継続プラン)を実現していったのです。グローバル企業の有事のオペレーション対応から多くのことを学びました。
2.シェアード型ヘルプデスク
数十社のクライアント企業の社内ITテクサポ事業を請け負っているセンターでも、コロナ拡大への対応で苦慮しました。「オペレータ皆さんの健康と精神面の安心を第一優先に、クライアント企業のオペレーション継続要望に応えるべく業務継続プランを検討」この基本コンセプトを元に、数々の施策を検討しました。
・在宅を希望するオペレータには在宅勤務できる環境を準備する
・出社を希望するオペレータにはタクシー、近隣ホテル短期滞在等の選択肢を提示する
・出社は30%未満に抑え、「密を避ける」「万一の感染者判明時に濃厚接触の拡大を防ぐ」
・上記オペレーション制約で業務影響がでる案件はお客様と真摯に調整・合意を得る
これらの基本コンセプトと施策方針をベースにマネージャ達が徹底的に議論を行い、ニューノーマルなセンターオペレーションを設計しました。お陰様でこれまでのところは大きな健康問題や業務への影響なく運営を続行して参りました。
以上2つの事例から、私達は「グローバル企業のオペレーション連携の素晴らしさ」と、「日本の企業ならではの従業員に配慮したオペレーション設計」を体現して参りました。コロナがもたらしたDX加速というプラスの側面を見つめ、以前よりも「より安全で、より効率的なセンター運営」を心掛けていきたいと話しております。
今月の理事だよりは如何でしたでしょうか?皆さんのご意見やご質問などもお受けできれば幸いです。
<NTTコミュニケーションズ株式会社 金子 憲史>