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[コン検通信 理事だより]これからのコンタクトセンターのあり方を考える

このところ誰かと会うと、コロナの話題で持ちきりですね。私もコロナに関する弊社の事例をご紹介しようかと考えましたが、今回はあえてコロナではなく、これからのコンタクトセンターのあり方に目を向けてみたいと思います。

ここ数年、コンタクトセンターにおける技術革新には目覚ましいものがあり、AIや音声認識、RPAなど、先進的な事例を聞く機会が増えました。また、長年にわたってCS(顧客満足)の向上を目指してきたコンタクトセンターが、CXの実現に向けて大きく舵をきったことにより、コンタクトセンターの指標などにも変化が表れています。

さらに最近はDX時代の到来と言われ、世の中のあり方が大きく変わろうとしています。

今回は、参考になる書籍のご紹介を含め、このように世の中が変化していく中で、コンタクトセンターの未来はどうなっていくのか少し考えてみたいと思います。

皆さんは「アフターデジタル」という書籍をご存じでしょうか。日経BP出版で、著者は株式会社ビービット 藤井保文氏、IT批評家 尾原和啓氏です。「アフターデジタル」では、私たちのアプローチがまだまだ「オフラインを軸にしたオンライン」であると指摘しています。例えば「オンラインでも実店舗のような接客を」とか「無人レジの一部導入」といった考え方がまだ主流であるということです。書籍ではこれからはオンラインでの展開が主流となりオフラインが存在しなくなる可能性に言及しています。

ただし、DX(デジタルトランスフォーメーション)と言っても、具体的に何をしたらよいのかわからない、という方もまだまだ多いと思います。経済産業省が発表した「DX推進ガイドライン Ver.1.0(平成3012月)」の冒頭部分では、DXは以下のように定義されています。「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」また、本文ではDXの目的は企業の競争力の維持・強化であり、多くの経営者がDXの必要性を認識しつつも、実際のビジネス変革にはつながっていない現状が記載されています。

DXITの活用を通じて、ビジネスモデルや組織を変革することと言えますが、まだまだ実現に向けては課題が山積しているようです。富士通グループでは、ICT企業からDX企業への転換を宣言し、ただ単にビジネスモデルを変革するだけでなく、働く人々の環境、企業文化も変えるべく、現在様々な取り組みを行っております。

それではDX時代の到来に対し、コンタクトセンターはどのような位置づけになるのでしょうか。

書籍には「顧客接点データを多く持ち、それをエクスペリエンスの良さに還元する」という新たな改善ループをいかに高速で回せるか。これが新しい競争原理です。と記載されています。アフターデジタルの世界で、顧客接点がキーになるのであれば、そこで果たせるコンタクトセンターの役割は非常に大きいはずです。

さらに、これまでのメーカー主導型のヒエラルキーにおいて、顧客接点が下流であるかの如く扱われていた状況が一転し、モノ作りも「接点の一つ」となり、バリューチェーンからバリュージャーニーに転換する、とも記載されています。

技術の進化に伴い、コンタクトセンター業界は今後消える仕事であると言われることもありましたが、この書籍を読んで、改めてコンタクトセンターの将来にむけての可能性を感じることができました。顧客接点を支えるコンタクトセンターにおいては、DXという大きな枠組みの中で、企業のマーケティング戦略を担う重要な機能として、今後さらに大きな価値を生み出していかなければならないと改めて感じた次第です。

そのためには、顧客接点にデジタルを活用することで、顧客の声をより効率的に収集し、収集した声を定性データから定量データに転換して分析するなど、今まで以上に一歩踏み込んだ機能を取り込んでいく必要があるでしょう。

技術の進化とともに歩んできた業界が、さらにもう一段上の世界に飛躍する時期なのではないでしょうか。

この書籍には、中国の先進的な事例が具体的に記載され、これからの未来に向けて、わくわくするような情報が多く記載されています。是非皆さんも機会があれば、ご一読ください。

 

<富士通コミュニケーションサービス株式会社 津江好美>